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会場には丸テーブルが六台あり、中央の二台を囲むように配置された四台には、古代中国の蜻蛉玉や、船原古墳出土の玉虫装飾馬具のレプリカといった、綾部自慢のコレクションが並べられていた。中央のもう一台のテーブルには、オルゴールのついたアンティークの宝石箱が蓋を閉めたまま置かれていて、パーティの趣向がまだ何か残されていることを匂わせていた。
呉服店主の剣持耕太郎が妻の幾代を伴って、講演の感想を伝えようと柏木のもとにやってきた。他の男性達が夏物のジャケット姿であるのに対して、仕事柄当然とはいえ、涼しげな紗の着物を妻とともに粋に着こなしている。
「柏木先生、お忙しい中、先程は興味深いお話を有難うございました。私などは虫なんて着物の柄くらいでしか馴染みがなくなっていたんですが、考えてみれば、日本人は昔から虫の鳴き声を愛でる文化を持っていたほどなんですから、自分ももっと関心を持つべきだと気づかされました」
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