玉蝉(ぎょくせん)

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「虫が天の川の光を見ているなんて、本当に素敵なお話でしたわ」と幾代夫人が夫に続いて言った。夫より若干(じゃっかん)年下で、五十代半ばといったところだろうか。夫のほうは貴金属店の店主の今野とほぼ同世代のように思われた。 「虫たちは人間とはかけ離れた姿や生き方をしているので、気味悪がられる方も多くて少々心配していたんですが、そう言っていただけてほっとしました。場違いな所にお邪魔した(かい)があったというものです」 「そんな、柏木先生が場違いだなんてとんでもない……」  柏木は幾代夫人の言葉に、場違いな者は他にいるという含みがあるように感じたが、それが誰を指しているのかまでは察しがつかなかった。
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