そこまでバラさなくていい……

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  「最初は素敵な香りだなって、思ってたのよ」  そんな風に嘉子は語り出した。 「ほんのり香るの、あの人の側にいると。  匂いまで素敵な人なのねって思ってたんだけど」  嘉子は、そこでなにかのカラクリ人形のように渋い顔をして言う。 「イラッと来てるときにその匂いを嗅ぐと、香りにまで、イラッと来るのよ。  こんなときまで、いい香りさせてんじゃないわよって」  例の素敵なお医者様の話らしい。 「そうなんですか……」
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