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「決めかねてるのよ、砂月の結婚式で着るドレス。
赤のがよかったのに、砂月、赤着るんでしょ?
となると、あの店の黄色いの。
でもちょっと、丈が短かったな~。
いつも行く店の奥にあった薄紫のもよかったのに。
薄紫も着るんでしょ?
ねえ、赤か、薄紫かどっちかやめない?」
「……私、色かぶっても気にしませんよ」
平和な悩みでよかった、と砂月が思ったとき、嘉子のスマホに着信した。
「やだ、もうっ。
なんで今、電話してくるのっ。
ここでこの間食事したとき、ちょっと喧嘩しかけたから、砂月の愉快な話で嫌な記憶を塗り替えようと思ったのに」
文句を言いながら、ちょっと嬉しそうだ。
もしもし、と言いながら、立ち上がり、テラスを海側に向かって歩いて行ってしまう。
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