第一章 腐れ縁の彼

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「本っ当……信じられない!」 静かなリビングに虚しく私の声が響き、そして吸い込まれて行った。食べかけの朝食を片付ける気にもならずただソファに深く沈み込んでいるだけ。彼が出て行ってから一時間、ずっとこんな具合だった。 専門学校を卒業して私よりも二年早く社会人になっていた彼の勤務地がたまたま私の住むマンション近くだった。 SEとして働く彼は新人らしく忙しい日々が続き、電車で10駅先にある実家に帰るよりも徒歩圏内の私のマンションに泊まって行くということが何度かあり、それは次第に常習化していた。 彼は確かに初恋の人だった。フラれてしばらく引きずっていたこともあったけれど、その後に出会った強烈な人の出現によってすっかり失恋の傷はなかったことになっていた。 だけどそれから月日を重ね、私の身にも色々あって若干恋愛に疲れていた頃に再会した彼。 見た目の変わった私に告白して来た彼に対して若干の嫌悪感を抱いたけれど、昔好きだった人という気持ちと今は少しだけ私の方が優位に立っているという状況から友だち以上恋人未満で付き合うならいいかなと思って告白を受けた。 友だちとして付き合い、そして次第に中学の時の気持ちが蘇って来て恋愛濃度が高くなって来るにつれて流れる様に肉体関係を持つようになった。 ──だけど私はそこで間違えてしまった
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