第二章 嫉妬深い彼

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『わたしね、ずっと虐待されていたの』 『え』 『両親からネグレクトされて来て……中学生になる頃に親と離されて親戚に引き取られたんだけどね』 『……』 円加と友だちになったきっかけはとある自己啓発セミナーに参加したことからだった。 大学に入った年にある人から誘われて参加したそのセミナーで出会い、同じ歳だということがきっかけで話をするようになった。お互いの心の傷を曝け出し話し合うことで私と円加は急速に仲良くなったのだった。 ほんの二時間程の飲み会。円加は明日も仕事だからということで早い時間でのおひらきになった。 「じゃあね、すず。またね」 「うん、気を付けて帰るんだよ」 「ははっ、すずはわたしの母ちゃんか」 「そう思ってくれていいよ」 「……」 何気なくいった言葉に少しだけ円加の表情が曇った。だけどすぐにいつもの明るい顔に戻り元気に手を振って駅のホームに消えて行った。 (もっと話していたかったな) 久しぶりに何も隠す必要のない親友とのお喋りは思いのほか楽しかった。 (まだ21時過ぎかぁ……) 週末の夜。ひとりきりの家に帰るには少し寂しいなと思った。繁華街をひとりでフラフラ歩くのも気が引けてどうしたものかなと思っているとタイミングよく携帯が鳴った。 慌てて携帯を手に取り発信者の名前を見てギョッとした。
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