第二章 嫉妬深い彼

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岸岡淳也──彼は私が読者モデルをしている時にお世話になったスタイリストだった。大学1年の時、街でスカウトされ【KILA】の読者モデルになった私を初期の頃から担当してくれた人だ。 岸岡さんは数多くいる若手スタイリストの中でも群を抜いて注目を浴びていた。スタイリストとしての手腕は評価が高く、その上岸岡さん本人がモデルのような容姿をしていて、そんな彼に纏わりつくモデルは多くいた。 そんな岸岡さんに私もときめきを感じた時期があったけれど例によって体のコンプレックスから強くアピールすることが出来ず、そのうちに同窓会で再会した豪とあやふやな関係になり岸岡さんに対する気持ちは萎んで行った。 私は読者モデルとしての評価が上がるにつれて芸能関係の多方面から声がかかるようになったことに不安を覚えた。それは紙面を飾る私だけではなくリアルに人前に姿を晒す機会が増えることを意味していた。 実際着る服も徐々に露出のある物が増えて行き、最終的には水着撮影までを示唆されるようになったのだ。その状況に私はここが潮時と悟り、読者モデルを辞める決意をしたのだった。 そんな危うい状況の中で岸岡さんから告白された。 『ずっと好きだったんだけどスタイリストとしてモデルに手を出すのはご法度だからずっと黙っていたんだよね』 『でもモデルを辞めるということはそういった肩書きの壁はなくなるよね?』 『どうか俺と付き合って欲しい』 矢継ぎ早にされる告白の言葉にただ驚くばかりだった。だってそれまで私たちの間に恋愛要素は窺えなかったから。
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