第二章 嫉妬深い彼

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でもそれを感じさせなかったのは私には豪が、岸岡さんにはスタイリストとモデルという肩書の壁があったからだと知ると驚くばかりだった。 そんな岸岡さんからの告白に一瞬グラついた。それはきっと私にはちゃんとした【彼氏】と定義づけてもいい相手がいなかったからだろう。だけどその時の私は豪との関係をなんとか前進したい気持ちの方が大きくて、結局岸岡さんに正直にその胸の内を話して告白を断ったのだった──。 (そんなやりとりが約一年前にあってそれ以来……なんだよね) 馴染みのバーで再会した岸岡さんは最後に会った時と何も変わっていなかった。たかだか一年といえばそうなのだけれど。 「ねぇ、どうなの?」 「……」 先程からしつこく豪とのことを訊かれている。だけどそれにどう答えるべきか迷っている。 (なんだかこのタイミングで別れたっていうと都合よ過ぎと思われないかな) 少し視線を外しながら色々考える。そんな私の態度に彼は何かを感じたのかいきなりカウンター上に置いていた私の手をギュッと握った。 「!」 「あのさ、そこでもったいぶられると俺、勝手に解釈しちゃうよ」 「え」 岸岡さんがいった言葉の意味が分からずポカンとしていると彼は支払いを済ませ私に「行くよ」と声を掛け手を繋いだままバーを出た。 「き、岸岡さ…!」 「……」 引っ張るように歩く岸岡さんは私の言葉に反応してくれない。 (やだ……怒らせちゃった?!) 私は黙る岸岡さんに逆らうことが出来なくてそのまま歩調を合わせるしか出来なかった。
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