第二章 嫉妬深い彼

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岸岡さんに連れられ入ったのはバーからそう遠くないファッションホテルだった。煌びやかな看板を視線が捉えた瞬間(やっぱり)と思ってしまった私はいやらしい女だ。 通された部屋に入った瞬間、壁に押しやられて唇を塞がれた。強く押された唇の薄く開いた隙間から生温い舌を差し入れられる。クチュンクチュンと粘着質の音が響く。 「はぁ……ダメだ、我慢出来ない」 「あっ」 しばし私の口を貪っていた岸岡さんは急かすように私をベッドへ(いざな)った。トンッと押し倒されてまた唇を貪られる。力強く、息つく暇もない程に濃厚に舐め上げられる。 思わず逆上せあがりそのまま何も考えられなくなった。うっとりとした気持ちのまま施される行為に身を任せてしまいたい衝動に駆られたその時、大きく前を肌蹴された感触でハッと我に返った。 「やっ!」 「!」 思わず岸岡さんの胸に手をやり強く押した。すっかり受け入れ態勢バッチリな雰囲気から突然拒絶されたような行動に岸岡さんは怪訝そうな表情を浮かべた。 「あ、あの……私……」 「此処まで黙ってついて来ていまさら拒否ってこと、ないよね?」 「あ、そ、それは……ない、です……けど」 「けど、何」 「……」 流されてセックスする訳じゃない。少なくても岸岡さんとならしてもいいという気持ちがあったらから此処まで黙ってついて来たのだ。豪とのことが無かったらあの時された告白を受け入れていたかも知れない程に岸岡さんを意識していたのだから。
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