第二章 嫉妬深い彼

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私が岸岡さんについた嘘──それは私が服を着たままセックスするのが好きだということ。その方が異常に興奮するのだと嘘の性癖を告白した。そんな告白に岸岡さんは怯むこと無く、それならこれからはそういう風にしようとかえって乗り気になった。 それ以来岸岡さんは私の嘘の嗜好に付き合って様々な衣装を着せながらセックスするようになった。定番のナース服にCA、メイド服に和装などなど。そして今日は今の私が着るには恥ずかし過ぎるセーラー服を纏いながらの行為だった。 職業柄そういった衣装を手に入れるのが容易いことが幸いして、意外とこの嘘は私と岸岡さんの関係を滑らかなものにしていた。 行為後の気怠い体をベッドに投げ出しながら語らう時間はゆったりと流れていた。 「はぁ……俺、自覚しちゃったなぁ」 「何が?」 「意外なほどにコスプレ好きだったってことに」 「……」 「服を着ながらのセックスって案外いいね」 「……でしょう?」 岸岡さんとの付き合いは順調だった。私が豪と別れたと知ると岸岡さんは二度目の告白をしてくれた。そんな岸岡さんに今度こそ『はい、よろしくお願いします』と返事をすることが出来た。 正真正銘彼氏彼女として付き合い始めてから二か月。私にとっては初めてまともな付き合いが出来ていると思った。だけど岸岡さんが私の望む通りの付き合いをすればするほどに胸の中では訳の分からない焦燥感に駆られる時がある。それは一体何処から来るものか、分からないようで分かるような気がする。でも今はこの幸せにドップリと浸っていたいと思った。
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