第二章 嫉妬深い彼

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焦る私に課長は大した反応も見せずに「あぁ、そうだ」といって紙袋をガサガサと探った。課長の掌の温もりが消えた頭をソッと触ってはぁとため息をついていると「はい、頑張り屋さんにご褒美」と目の前に小さな包みが差し出された。 「出張のお土産。みんなに買って来たんだけど今、香村さんいたから」 「え……いいんですか?」 「いいのいいの。いつもやっていることだから」 「はぁ…。あの、それではありがたくいただきます」 「うん」 課長から手渡された包みを受け取り早速セロハンテープを綺麗に剥がして中身を見ると目にした一瞬で心ときめいた。 「綺麗な和柄!」 「それね、越前和紙の名刺入れ。出張先の工芸品なんだって」 「そうなんですか。わぁ……嬉しいな。私、和柄好きなんです」 「そうだと思った」 「……え」 何気なく交わされていた会話だけれど不意に気に留めるフレーズが出た。 「香村さん、そういうの好きそうだと思った」 「私、どこかでいいましたか? 和柄が好きとか日本的なものが好きだってこと」 「ううん。ただ細かい持ち物がそれっぽい物ばかりでしょう? だからきっとそういうのが好きなんだろうなと思っただけ」 「……」 驚いた。私の見かけにそぐわないだろう趣味嗜好を少ない情報から見抜くとは。
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