第二章 嫉妬深い彼

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(さすが課長! ──と思っていいのかな?) 「先に渡したってことは内緒にしておいてね。特に三内さんが知ったらからかわれるネタになるかも知れないから」 「ふふっ、分かりました。内緒、ですね」 今までひとりきりで寂しい、ちょっと怖いと思っていたフロアが課長の登場で一気に温かな雰囲気になった。 (本当、不思議な人だな) 「さてと、香村さん後どれくらいで終わるの?」 「あ、もうすぐです。後は出力してコピーするだけで」 「そうなの。じゃあまとめるの手伝うかな」 「え、手伝いなんて……というか課長はどうして此処に?」 「僕は忘れ物を取りにね」 そういって課長はデスクの引き出しから何かの手帖を出してヒラヒラさせていた。 「出張帰りに取りに来るほど大切な物なんですか?」 「いや、別に明日でもよかったんだけどね。たまたまタクシーで会社の前を通りかかったらうちのフロアに明かりが点いてて」 「……」 (それって……残業している人がいるかもって気になってわざわざ寄ったってこと?) 課長は最後まで事の真相をいわなかったけれど、何故かそう思うとしっくり来てしまうのだった。
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