第二章 嫉妬深い彼

20/35

262人が本棚に入れています
本棚に追加
/62ページ
36歳で課長職。着実に出世コースを歩んでいるだろうまっとうな人だからこそしっかりとした家庭があるのだと勝手に思っていたけれど、独身と知ると途端に課長に対して不安な気持ちになった。 (なんで独身なんだろう) 仕事も出来るし容姿だってそこそこいいし、性格も穏やかで優しそうなのに…… (36で独身ということは何らかの欠陥があるってこと……なのかな) 「おーい、香村さん? 訊いている?」 「! あ、訊いてます」 「いいんだね、ラーメンで」 「え……あ、はい」 私が色々考えている間に課長とラーメンを食べに行くことになっていたみたいだ。 (ラーメン……お店のラーメンは久しぶりだなぁ) ラーメンは好きだけれどひとりでお店に入って食べるという高尚な技はまだ使いこなせていなかった。 (豪と行った時以来かな) こんなふとした時につい思い浮かべてしまうのは気さくに付き合えていた腐れ縁の彼のことだった。 (岸岡さんはラーメンっていうよりイタリアンって感じだしね) つい今彼のことを思い出してこっそりと噴き出してしまうのだった。
/62ページ

最初のコメントを投稿しよう!

262人が本棚に入れています
本棚に追加