第二章 嫉妬深い彼

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「ぃらっしゃいませぇぇー」 独特のイントネーションの挨拶に迎えられ課長とふたりで案内されたカウンター席に座った。その途端に店主と思われる男性が私たちの前に立った。 「あれ、 やっちゃん。なになに、今日はえらい別嬪さんを連れて来ちゃってぇ」 (や、やっちゃん?!) いきなり課長に対してされた気さくな話しかけに驚いた。 「ちょっと、その呼び方止めてくれない? 一応部下の前なんで」 「部下! こんな美女が部下っ! くぅぅぅ~~~いいなぁ~やっちゃん」 「だから呼ぶなって」 カウンター内の男性と課長はやけに親しげに会話が弾んでいた。 「あの……課長」 「あぁ、ここ友人の店なんだ。中学高校と一緒だった」 「そうなんですか」 「どうも初めまして。やっちゃんの親友の岡本です。以後お見知りおきを」 「見知らなくていいからね」 「おいおい、やっちゃん! オレにも美女のお裾分けさせてくれたっていいじゃんか」 「そういう馬鹿なことをいっている間にラーメンの注文取ったらどうなの」 「あー話逸らした! ちくしょー独り占めしようって魂胆見え見えだぜ、やっちゃん」 「何いってるの。職務放棄するなら出て行くよ」 「あぁ、嘘嘘、行かないで! 食べてって!」 「ふふっ」 岡本さんと課長のやり取りが面白くて思わず笑ってしまった。 「かぁぁ~、美女は笑い方も美女なんだなぁ~。ご注文は何にしますか」 「えぇっと……何がいいかな」 壁に掛けられているメニュー表を目で追っていると「オススメは味玉醤油ラーメン」と横から課長がいってくれたのでそれを注文した。
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