第二章 嫉妬深い彼

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それほど広くない店内だけれどそこそこお客さんが入っていて賑わっていた。生憎と女性客は私だけできっと課長と一緒じゃなかったら入らないだろうタイプのお店だった。 「しまった……選択を誤ったかな」 「え? 何がですか」 課長がボソッと呟いた言葉に思わず反応してしまう。 「あ……いや。もしかして気を悪くしたかな? こんな男臭い店に連れて来てしまって」 「気を悪くだなんてそんなこと全然思っていませんよ」 「でもジロジロ見られるの、嫌でしょう」 「ジロジロ……?」 そういわれてから気が付いた。店内にいる男性客のほとんどが私をチラチラと見ていたことに。 「不躾だよね。すまなかったね」 「どうして課長が謝るんですか。私、別に気にしていませんよ」 「……」 「それよりも美味しいラーメンが食べられることの方が嬉しいですから」 「……そう、よかった」 課長は私が好奇の目に晒されているのではないかということを気にしてくれたようだ。だけど私に至っては残念ながらこうやって見られることには慣れてしまっているので特に気にしていなかった。 (本当に課長って優しいな) きっと課長が10歳くらい若くて私に彼氏がいなかったら好きになっていたかも知れないな、なんて思ってしまった。 (私がこんな風に思うんだもん、他の人だってそう思うよね?) きっと課長はモテるだろう。なのに何故独身なのか──? やっぱり課長に対しての疑問はそこに至るのだった。
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