第二章 嫉妬深い彼

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一日の業務を終え次々に更衣室から出て行く人を見送りながら着替えて携帯を手にすると着信が来ていた。確認すると岸岡さんからだった。 【明日の予定何かある? なかったら今夜から家に泊まりに来ない?】 (お泊まり……かぁ) それは魅力的なお誘いだった。彼が私を家に呼んでくれるのは初めてだった。 (ちょっとドキドキするけど……大丈夫、だよね) 土日休みで金曜日の夜から彼の家にお泊まりというシチュエーションに密かに憧れていた。それもちゃんとした彼氏彼女という関係でなされることに。 【大丈夫です。行けます】 すぐに返信すると【じゃあ会社まで迎えに行くから入り口付近で待っていて】と返って来た。 (わぁぁ、益々憧れていたシチュエーション!) ドラマや漫画でありがちな設定がリアルに起こりつつあることに嬉しさは最高潮に達していた。 岸岡さんが迎えに来てくれるまで時間があったので会社近くのコンビニに寄ってお泊まりグッズを購入した。 (コンビニって便利だなぁ) 必要最低限のものが置いてあるのはありがたいけれど、自分がいいと思うようなデザインのものが置いていないのは少しだけ残念だった。 そろそろ時間かなと思っていると会社に向かう私とは反対に駅方面に向かう課長と会った。 「あれ、香村さん? どうしたの、忘れ物?」 「いえ、そうではなくて……──あっ」 どう答えるべきか少し悩んでいると丁度視界の先に見慣れた車が停まったのが見えた。
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