第二章 嫉妬深い彼

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土曜日の午後から日曜日の夜まで私は円加の家で過ごした。どん底に落ち込んでいる身でひとりきりになるのが怖かったから。 一日半、円加と過ごして私の気持ちは少しずつ浮上して行った。 ──そして月曜日 「おはようございます」 「おっはよ~。月曜だっていうのに元気ねぇ香村さん」 「はい、新しい週の始まりですよ。頑張りましょう」 「週の始まりは日曜日からだよ~。もう既に身も心も疲れ切ってる~~~」 「何かあったんですか、三内さん」 「そっれがさぁー、昨日高校ん時の友だちの結婚式に出たんだけどさ、もう新郎側の友人といったらほぼ既婚者で目ぼしい独身男はロクなのがいなくてさ」 「三内さん、結婚式になに目的で行ってるんですか」 「もちろん出会いの場として! 結婚式で婚活よ」 「あははっ」 相変わらずぶっ飛んだ三内さんの軽快トークがさく裂している中きこえた始業開始を告げるチャイム。 「でね、いったのよ、わたし。今時そんな条件の女なんていませんよって」 「はい」 「30過ぎて夢見過ぎだっていってんのに自分は他の人とは違うってナル要素丸見えなのに辟易しちゃってね」 「へぇ」 (そろそろ、かな) 「ちょっと、訊いてる? 香──」 ポカンポカンッ 「!」 (来たっ) 「こぉら、いつまでお喋りしているのかな。とっくにお仕事の時間は始まっていますよ」 「もう、課長! いつもいつも頭叩くの止めてくださいよ! 口でいえば分かるでしょう」 「口でいって分かる程度はとっくに超えているんですよ、三内さんの場合はね」 「……」 いつも通り課長に丸められた紙の束で頭を叩かれた。
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