第二章 嫉妬深い彼

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(……ふふっ) 何故か今日はそれがとても嬉しかった。 (課長はいつも変わらないなぁ) 私自身、どうしてか分からなかったけれど急に目頭が熱くなった。 「──香村さん?」 「!」 不意に目の前に影が差した、と思ったら課長の顔がすぐ其処にあった。 「大丈夫かい? そんなに痛かった?」 「えっ! あ……い、いえ、すみません」 「……」 「お喋り、してて……あの」 ジッと見つめられている課長に対して何といっていいのかしどろもどろになっていると 「三内さん、香村さんを道連れにするのもほどほどにね」 「えぇー、道連れなんてしていません。いっつも課長はそういいますけどねー」 慌てている私から緩やかに視線を外し課長は三内さんをお説教していた。 (無視……じゃ、ないよね。見て見ぬ振りしてくれた?) 気が付けば私の目には涙が溜まっていて何かの拍子に零れてしまうんじゃないかという具合だった。 (泣いているのに気がついてスルーしてくれたのかな) 大丈夫だと思っていたのはどうやら私の過信だったらしいと思うと不甲斐ない気持ちでいっぱいになったのだった。
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