第三章 優しい上司

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(だからってこんなミスで思い知らせるなんて~~~) よりにもよって課長に指摘された幼稚なミス。 (恥ずかしい……本当に恥ずかしい!) 慌てふためく思考とは裏腹に脳の違う場所では懸命に数字を追いかけ、今度こそ絶対に間違えないようにキーボードを打ち続けていた。 結局夕方間近から打ち直しを始めた作業は終業後一時間過ぎて完成した。 「──はい、大丈夫です」 「はぁ……よかったぁ」 修正書類を確認して課長は指定の場所に判子を押した。それを見届けた瞬間肩から力が抜けるのが分かった。 「残業ご苦労様」 「いえ、私のせいで課長まで付き合わせることになってしまってすみませんでした!」 明日の朝一には部長の手元に届いていなければいけない書類だったために私の作業が終わるまで課長も一緒になって残業してくれていたのだ。 「いいよいいよ、別に。この会社は他の会社に比べて早く終わり過ぎるきらいがあるからね。多少の残業はへでもないよ」 「……」 (やっぱり優しいな……課長) 恥ずかしいミスをしたにもかかわらず頭ごなしに叱らず必要最低限の言葉と態度で見守ってくれたことが私にはとても嬉しかった。
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