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「気のせいかと思っていたけどここ数日、香村さん様子がおかしかったよね」
「……」
「だから何かあったのかなとずっと思っていてね」
「……」
「杞憂だったらよかったんだけどそうじゃなかったということだね」
「……」
不意に課長は建物の陰に入り私を抱き寄せた。
(?!)
予想外の課長の行動に頭が真っ白になった。だけど抱かれたのはほんの一瞬で、すぐに放された体はもどかしい疼きを残した。
「ごめんね、いきなり」
「い、いえっ」
「ねぇ、何があったか話せる?」
「え」
「香村さん、誰でもいいから話を訊いてもらいたそうだ」
「えっ……い、いえ、そんなことは」
「いやいや分かるんだよね、僕くらいのおじさんになると。何の関係もない他人に話をしてスッキリしたいと思わない?」
「……そ、れは……」
「三内さんには話せないことでも僕になら話せることってない?」
「……」
「もちろん無理に話せなんていうつもりはないよ。僕にはそんな権限ないからね。でも心に溜め込むのは心身共によくないと思うし」
「……」
「今日みたいな小学生でもしないような恥ずかしいミスをされると上司としては心配になるんだよね」
「!」
(そ、それを今、いいますかぁぁぁ!)
なんだか不思議だった。課長と話していると頑なだった心がゆるゆると解かれて行くような気がして自然ともっと話をしていたいと思えてしまったのだった。
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