第三章 優しい上司

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耳に届く鳥の鳴き声にぼんやりと意識は覚醒して行く。 (……ん) 薄っすらと開いた目に映るのは見慣れた風景だった。 「………あ、れ?」 ガバッと起き上がると同時に頭がズキンと痛んだ。 「痛っ…!」 痛む頭を抱えながらベッドの横に置いてある時計を見ると6時少し前だった。 「……あれ、私……昨日……」 ボソッと呟く声は静かな部屋に吸い込まれ消えた。 (昨日、どうやって帰って来たの?!) 記憶にあるのは課長と割烹料理屋さんで食事して飲んで愚痴をいっていたところまで。それからは──…… 「………え……えっ」 思い出そうとしても頭の中には何も浮かばない。そして改めて自分が置かれている状況を確認する。 (此処は……私の部屋) いつもの見慣れた部屋の一角に置いてあるベッドの上で寝ていた。 (服装は……) ジャケットはいつもの場所に掛けられていてブラウスとスカート姿で寝ていたようだ。 (特に乱れていない……) でもやっぱりどうやって帰って来たのかは全く記憶になかった。 「……はぁ、ヤバい……日本酒って酔い方が違うんだ」 正直日本酒を飲んだのは昨日が初めてだった。いつもはビールか甘いカクテルばかり好んで飲んだ。でも口をつけた日本酒はスッキリしていてとても口当たりのいい美味しいお酒だった。だからつい量が増して…… (そんなに飲んだつもりはなかったんだけどなぁ……) 小さなお猪口でチビチビ飲んでいてトータルでどれくらい飲んだのかは分からない。
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