第三章 優しい上司

10/17
前へ
/68ページ
次へ
起床から二時間。まだ若干痛む頭を抱えながら出勤した。 「おはよう、香村さん」 「あ……お、おはようございます」 「なぁに、顔色悪いわよ? 大丈夫?」 「はい……ちょっと二日酔いなだけで」 「あら、平日に珍しいわね。飲むなら金曜日の今夜でしょう」 「ははっ……そうですね」 (くぅぅ~~~この状態での三内さんの声、響くなぁ) 飲んだ鎮痛剤の効きが悪くて憂鬱になった。 (はぁ……今後は日本酒飲むの止めよう……) なまじ口当たりがよくて飲み易いけれど私には合っていないのかと思った。 「おはよう」 「!」 不意に聞こえた声にドキンッと胸が高鳴る。 「あ、課長おはようございます」 「お、おはよう、ございます」 三内さんに続いて出勤して来た課長に挨拶をした。チラッと課長の顔を見るけれどその顔はいつも通りの優しげな表情を浮かべていた。 (課長、いつも通り過ぎる) それがかえってずっと感じていた不安感をより一層増した気がした。 そして鳴り響く始業時間を報せるチャイム。一斉にフロアにありとあらゆる機械音が鳴り響きだした──その時 「香村さん」 「!」 突然の課長の呼び出しにドキッと胸が震えた。少し躊躇いながらもおずおずと課長の元へと赴いた。
/68ページ

最初のコメントを投稿しよう!

265人が本棚に入れています
本棚に追加