第三章 優しい上司

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「香村さん」 「!」 横から聞こえた声に飛び上るほど驚いた。 「あぁ、ごめんね。驚かせたかな」 「か、課長……いえ、大丈夫です」 終業後、課長と待ち合わせた会社近くのコンビニの駐車場で考え事をしながら待っていた私は明らかに動揺していた。 「遅くなってごめんね。とりあえず移動しようか」 「はい」 高鳴る胸を抑えて私は課長の後について行った。 「……課長?」 「ん?」 「これって課長の車、ですか?」 課長がコンビニの駐車場に停めていた車のドアを開けたからビックリした。 「そうだよ。あれ、今、駐車場に停めた車から出た僕を見ていなかった?」 「は、はい。だから急に声をかけられて驚いて……」 「あぁ、そうだったんだ。今日は車で来たんだよ。初めて招待するから電車より車の方がいいかなと思って来たんだけど」 「……え」 (初めて招待……?) 課長のいっていることが少しずつ私の中で噛み合わなくなって来て戸惑っていると課長の表情は何ともいえないものへと変わって行った。 「あれ? ……もしかして冗談だったの?」 「な、何が、でしょうかっ」 「昨日のことなんだけど」 「昨日?! あ、あの、昨日私は課長に一体何を…!」 「……」 「どうやって帰って来たのかも分からなくて……その、課長のメモが家にあったのもどうしてかなと……」 「……はぁ、驚いた。全然酔っていないように見えたのにやっぱり待ったをかけてよかった」 「えっ?!」 (課長が訳の分からないことをいっている!) 課長の言葉に私は益々気が動転した。
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