第三章 優しい上司

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『課長ぉ、もう少し私の話を訊いてください』 『うん、訊くから。でもね、今日はそろそろ帰ろうか。明日も仕事だし』 『嫌です、訊いてください!』 『香村さん、我がままいわないで』 『……じゃあ……課長のお家に連れてってください』 『え』 『私、課長のことが気になっていて……優しいし大人だし……だからもっと課長のことが知りたいんです』 『酔っているでしょう、香村さん』 『酔っていません、素面です! 証拠みせましょうか? 私の自宅住所は──』『あぁ、分かったから。──じゃあ、明日』 『明日?』 『うん。今日はもう遅いからね、明日家においで』 『本当ですか! 絶対ですよ、約束ですよ』 『はい、約束ね。だから今日は大人しく自分の家に帰りましょう』 『はい、帰ります! 課長も一緒に帰りましょう』 『うん、僕も自宅に帰るよ』 『えぇー、送ってくれないんですかぁ? こんなに遅いのにぃ? 真っ暗なのにぃ?』 『……あぁ、そうだね。うん、送ります。タクシー捕まえて来るから待っていなさい』 『はぁい』 「──それで自宅に着いた君は鍵を開けた瞬間、倒れるように寝てしまったからとりあえずジャケットだけを脱がせてベッドに寝かせてお暇したのだけれど」 「~~~っ」 コンビニの駐車場に停めてある課長の車の中で昨夜の真実を告げられ顔から血の気が引いた。
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