第三章 優しい上司

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「えぇっと……まさか店でのあの会話、全く覚えていないってこと?」 「~~~も、申し訳ありません! 全然覚えていないんですっ」 (あぁぁぁぁぁ、私ってばなんて恥ずかしいことを言ってしまったの?!) 酔いにまかせてとんでもないことを口走ってしまったと恥ずかしくなった。顏に熱が集まるのが分かりまともに課長の顔が見られなかった。 「……そうか。やっぱりあれは酔いからの言葉だったんだね」 「え……」 呟くように聞こえた課長の声に反応して顔を上げた。するとそこには頬をほんのり赤らめて戸惑っている課長の顔があった。 「僕としたことが香村さんの言葉を鵜呑みにして年甲斐もなく浮かれてしまって恥ずかしいな」 「……」 「まさか君の方から歩み寄ってくれるとは思わなかったから……その」 「……」 「浮かれ気分を抑えながら冷静に振る舞っていたが、でも今日の君の様子を見てもしかしたら覚えていないのかな? とチラッと思ったりもしたんだ」 「……」 「ははっ、残念な方の予感的中か」 「……課、長」 先程から漏れる課長の言葉はどういう風に受け取っても私にとってはいいようにしか聞こえなかった。
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