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「変な雰囲気にしてすまなかったね。じゃあとりあえず今日は何処か別の店で食事をするだけに──」
「……たいです」
「え」
「か、課長のお家、に、行きたい……です」
「……」
気が付けばそう口にしていた。
「課長が嫌でなければ私、課長の家に行きたいです」
「……香村さん、それ、ちゃんと意味が分かっていっている?」
「……」
「僕は昨日の香村さんの言葉が嬉しくて、もしかして同じ気持ちだったのかなと思って、でも念のために一晩考える猶予を与えた」
「え」
「本音をいえば昨日、君が強請ったのをいいことに自宅に連れ込んで感情の赴くまま行動していたかも知れなかった」
「!」
(そ、それって……つまり課長は私と……)
「でもね、話を訊いてもしかしたら失恋の痛手で正常な思考が出来ていないんじゃないのかなとも思った。でなきゃ僕みたいなおじさんを相手にする君じゃないと何度も言い訊かせ冷静になって思い留まった」
「……」
「でもどこかで信じたかった。昨日の君の言葉は真実だと。……本当、恥ずかしい話なのだけれど」
「……課長」
気付いた時には課長の手を握りしめていた。
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