第三章 優しい上司

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「た、確かに昨日のことは全く覚えていないんです。慣れないお酒に酔ってしまって……ほぼ記憶はない……ん、ですが」 「うん」 「だけど課長にいったことは嘘ではありません」 「──え」 「少しだけお酒の力を借りて本心を漏らしてしまったのかも知れません」 「それって」 「私、課長のことが気になっていて……もっと課長のことを知りたいと思っていて……」 「……香村さん」 よく考えればこんなに誠実な人はいない。酔っていないと思っていた女から好意を匂わす言葉を投げかれられ、その気になれば易々とホテルに連れ込めた状況だったにも関わらず課長は最後まで紳士的だった。 (一拍置いて物事を考えられるなんて……そんな(ひと)、今までいなかった) もうとっくに答えは出ていた。 「私、課長が……課長のことが好きです」 そう告白した時、私の頭の中は真っ白でその気持ち以外の雑念は何ひとつなかったのだった。
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