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「あの……でも私、彼氏いますし……その」
「分かってる! だから余計にいいの!」
「え」
「香村さんなんて連れて行ったら絶対男側全員香村さんをロックオンすると思う。でも彼氏がいて単なる数合わせで来ているっていえば女子不足の不満もなくわたしが狙った男をより一層釣り易くなるでしょう?」
「は……えぇっと……」
(どういう意味?)
つまりは女子のレベルを高く見せつつ、でも本命の女は彼氏持ちということでフリーの女子が狙った男に近づく確率が上がるということなのだろうか。
「だからお願い! どうしてもミツトモ製薬の人と付き合いたいの!」
「……」
普段からお世話になっている三内さんのお願いだから無碍に断ることに躊躇いがある。
(それでもやっぱり)
「ね、香村さん」
「あの……一応彼に確認してもいいですか?」
「え」
「合コンに行ってもいいかという確認です。やっぱり彼に内緒でそういう処に行くのは私、出来なくて」
「うん、訊いて! あ、もしなんだったらわたしがフォローするから!」
「いえ、それは大丈夫です」
少しだけ顔を引き攣らせながら私は食事を終えてから更衣室へと移動してロッカーに置いてある携帯を手に取った。
(康隆さん、出てくれるかな)
午前中いっぱい外回りに出かけている彼宛てに電話をかけた。するとすぐに出てくれた。
『もしもし?』
「あ、寿々子です。今、お話してもいいですか?」
『うん、大丈夫だよ。どうかした?』
「あの、実は──」
三内さんから頼まれた合コンの件を手短に話した。
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