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面白いヤツ
「あれ?君…。
うちの部の一年生?だよね。」
自転車置場で俺はあいつに初めてそう声をかけた。
「はい…。名前、なんだっけ。」
本当は知ってたけどわざとそう言ってやった。なんでだろ。変なプライドってやつかな。
「只野です。」
照れた顔で俺を見てくる。今日もいつもみたいに。
「あぁ、只野くんね。
なんかよくここで会うよね。
時々目が合うし。」
そう。こいつが毎朝俺を見てるのは知ってた。
「え?」
ますます顔を赤らめてる。なんだこいつ。
「時々って言うか…ガン見してくるもんね。」
「え…?あ…。っと…。」
やっぱり思った通りだ。俺の事、好きなんじゃん…。
「ん?違った?」
「はい。いえ、まあ…。目が、行くかな。だって背が高いしイケメンだから目立つし。先輩はみんなの憧れだし。」
「憧れ?俺?」
「そう。僕もそんな風になりたい。だから、つい…」
「そっか。ま。悪い気はしないわぁ。」
こいつが俺に憧れの目を向けてたのは知ってる。好かれるのは嫌じゃない。けど、ってまさか、そっちじゃ、無いよな…。
「あの人彼女…?ですか?今度の」
一緒に登校してきたマナミの方を指差した。マナミがマネージャーだってこと知らねぇんだ、そうか。最近あんま部活に顔出さないしな。
「ん?あぁ…。今度、か。」
よく見てんな。このあいだまで俺は別のやつと付き合ってた。付き合ってたつもりはなかったし、別れた記憶もないけど…。
「いいですね。」
物欲しそうにマナミの背中を見てる。
「欲しいの?」
「何が?」
「何って、彼女。」
そうか、こいつはマナミが好きなのか?
「付き合ってって言われたから付き合ってるだけ。」
なんとなくそんな風に適当な事を言う自分に今さら驚く。そうか、俺、マナミの事そんな風に思ってたんだ。なんて。でも、付き合ってなんか、無いけどね。説明するの面倒なだけ。いきなりあいつはセフレだとか言えないし。
「付き合ってって言われたら誰とでも付き合うの?」
いきなり食って掛かってくるような言い方をされて驚いた。
なに?俺、もしかして今、こいつに責められてる?
なんかさ。こいつ、俺に浮気でもされた彼女みたいな顔してこっち見てるけど…。
やっぱ好きなの?俺の事。
付き合いたいとか思ったりすんのかな…。
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