只野君のただの憧れ

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只野君のただの憧れ

「まさか。俺だって好みはある。 だけど流石に君に言われたら悩んじゃうな。」  ふざけて言ったのに顔を真っ赤にした。ん?こいつ、真に受けてる?  え?うそだろ? 「はい?それどういう意味?」  なに?マジでムキになってない?  そんなのを見てたらちょっとからかってやりたくなった。 「そのまんまだよ。 だって好きでしょ?俺の事。毎日待ち伏せしてるよね?」  急にドギマギし始めた。  やっぱビンゴか。  こいつ、かなりおもしろいんですけど。 「別に好きじゃ、ないです。憧れてるだけです。ただの憧れ」  あわてて必死に否定された。そっか。そうだよな。憧れ、か。 「ただの憧れ、ね。只野くん…」  たまたまそう言って自分でも可笑しくなった。名前をいじったつもりはなかったけど。 「そもそも男同士なんだし。 憧れと好きとは違うから。」  おもいっきり否定してきやがった。なんだよ、そんなにムキになって否定するなよ。って、なんかちょっとガッカリしてる俺。 「そっか。でも嫌いじゃ無いだろ?」  俺は何より、人から嫌われるのが昔からイヤだ。みんなに好きでいて欲しい。友達でも、親でも、先生でも。後輩でも…。 「嫌いじゃ…ないですけど。」 「俺も嫌いじゃないよ? じゃあ試しに付き合ってみようか。俺たち。」 「は?試してみる? なに言ってるんですか!」 「ははは。冗談だってば。 なにムキになってんの。 面白いね。 ただの只野君。」  何か俺がふざけていう度に真剣に答えてくるその顔もなんかも態度も、なんか楽しくて退屈しない。 「ふざけないでくださいって。 僕は免疫が無いんだから。 どうしていいかわからないし困る。」 「確かにその顔、困ってる顔だ。 相当面白い。」 「僕は面白くない。」 「免疫がないって?どういう意味?」  まさかと思ったけどあえて聞いた。 「はい?ぼ、僕はまだ人と付き合ったことがないからそんな話されても答え方がわからない。って意味です。」  へぇ。珍しいな。こういうタイプか。結構可愛い顔してるし、女の子にモテそうなのにな。自分からは行けないタイプか。いわゆる草食系ってやつだ。 「へー。付き合ったことないの? マジで?じゃあ練習、してみる?」  また俺のイタズラ心が顔をもたげる。照れた顔をみてもっといじめたいとか思ってる。何やってんだ、俺…。 「はい?」  タコみたいに顔を真っ赤にしてるその顔がやっぱり可愛いなんて思ってる俺がいた。
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