只野君のただの憧れ

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「カイ!早く行こ」  向こうの自転車置場で待ってたマナミが俺を呼んでる。 「あ、先行ってて」  目の前で真っ赤にしてるそいつの首根っこを掴むと腕を回して肩を組んだ。 「あっそ」  マナミがめんどくさそうに先を歩く。  俺は俺の腕の中でまだ顔を真っ赤にしてるこいつの事を離さずに引きずるように校舎に向かって歩きだした。  上目遣いで見てくるこいつを見てたらなんだかやっぱり楽しくて仕方なかった。 「お前さ、なんでバスケ部入ったの?」 「はい?」 「ドリブルも出来ないくせに」 「あ…」 「いいけどね、別に。けど、完全に終わってるよ?うちの部は。もうみんなやる気なくしてる。強かった先輩たちみんな引退したしな。二年は全員辞めたし。顧問も変わったから。」 「けど、まだ先輩がいる」 「え?」 「カイ先輩が、まだいる。」 「え?俺?」 「かっこよかったから。」 「ふーん、見たことあんだ」  予鈴がなる。廊下で別れた俺たちはそれぞれ別の階に散った。  本鈴が鳴り響き余韻がまだ微かに耳に残る。さっきまであいつの首に回してた腕のあいつの熱も少しずつ冷めていく。  なんだか急に寂しくなる気がした。
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