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【2】
ここに僕の探しモノがあると知ったのは、ついさっきの事だった。
近隣のドラックストアなんかを何軒か回ってみても、なかなか目的のモノを見つけられないでいた僕は、一度乗っていた自転車を止めて日頃から使っていたSNSに助けを求める事にした。
ネット通販を使うと言う手もあるにはあったけれど、僕の家は両親と祖母の4人住まい。僕の知らない所で配達物を勝手に開けられてしまうリスク(特に祖母)があるのは否めない。
仮にコンビニ受け取りにしても、購入履歴や何かの拍子で足がつくかもしれない。それを嫌った結果、こうして自分の足で直接買いに行くという決断に僕は至ったのだった。
もちろん身バレは御免なので“変装”は忘れてはいない。普段は掛けない眼鏡を掛けてキャップを深く被りマスクをつける。
これで顔の9割は隠せているのだから、僕がN高校に通う2年B組の小林 琉偉だとは誰も気付けないはずだ。
内心、変装に身を包んだ僕は『甲賀忍法帖』という小説に出て来る如月左衛門さながらと言ったところだ。
今の僕なら、誰でも欺く自信がある。
一見ただの変質者に見えなくもないことは一旦置いておくとして、僕がSNSへ発したSOSには、ありがたいことに早速こんな返信が来た。
『国道沿いのショッピングモールに入っているシャルムってお店は品揃えがめちゃくちゃ多いんで、もしかしたら見つかるかもです!』
なるほど――。
しかし、国道沿いのショッピングモールはここからだとかなりの距離がある。
地図アプリを開くと『目的地まであと45分』との表示。
駅近でもないし、さすがにそこまで行けばクラスメイトに目撃されるなんて事はきっとないはずだ――。
しかし、そんな僕の見通しは大変甘かったと言わざるを得ない。
目当てのモノを前にして心なしか緊張していた僕は、きっと周りが見えなくなっていたのだろう。
僕は、後ろから近づいて来る人影に全く気付けなかった。
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