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「ねぇ、ヴィンスの腹筋触っていい?」
「え?」
「さっき見たら割れてて気になって!」
どうせなら眼鏡をかけていないイケメンの状態で触りたい。
返事を待たずにお腹に触れる。硬い。撫で回しているとヴィンスが身を捩った。
「くすぐったかった?」
「……もうおしまい! 眼鏡を取って」
「ヤダ。もっと触らせて」
「これ以上は無理!」
手首を掴まれて離されるが、触ろうと力を込める。その勢いのままヴィンスとベッドに倒れ込んだ。驚いて目を丸くするヴィンスを気にすることもなく、寝転がりながらお腹に触れる。
ヴィンスが僕の手を振り払う。今度は僕が驚く番。そんなに嫌だったとは思わなくて。
「ヴィンス、ごめん。僕、調子に乗っちゃったね」
僕の顔の横に両手を付き、眉尻を下げて赤い顔で僕に覆いかぶさるヴィンス。この体勢には覚えがある。昼間、カイルに救護室のベッドで迫られた時と同じだ。
「ノアが俺のこと幼馴染としか見てないって知ってるから言うつもりなんてなかったけど、俺だって男なんだ。好きな子にそんなことされたら我慢できなくなる!」
「……え? 好きな子?」
ヴィンスは恋愛関係にならない唯一のキャラクターじゃないの?
「そうだよ。小さな頃からずっとノアが好きだった」
近付いてくる顔にハッとして、両手でヴィンスの口を押さえた。
「お前、隠しキャラか?!」
ヴィンスの下から慌てて抜け出す。
そうだよ。他のモブと違って名前があるし、パッケージには載っていないけどHPには小さくだけど載っていた。幼馴染で眼鏡を外すとイケメンなんておいしい設定をただのモブにつけるわけがない。
ヴィンスは言うつもりがないと言っていた。なんでヴィンスルートに入った? もしかして、他のキャラクターとのフラグを全部かわして、スキンシップをとってヴィンスとの好感度が上がったから? 小さな頃から一途に思い続けている幼馴染との隠しルート、BLゲームでだったら攻略サイトを見てでも絶対に見たいストーリーだ。
「ノア」
熱っぽく名前を呼び、ベッドの上で距離を詰められた。僕は震える身体を抱きしめる。やっぱり、どんなに好きな設定でも、僕が口説かれるのは無理!
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