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メイドは、黒いロングスカートに大きなフリルのついたエプロン。ヘッドドレスを着けた黒髪はキッチリ纏められている。変わっているなと思ったのは、背中に本当に黒い羽根が生えているようなデザインで、やはり少々ダークな世界観を表現しているようだ。
テーブルへ案内される前に、手前の小さなカウンターで止められた。
「それではご主人様。こちらで当店のシステムをご案内させていただきます」
システム?
時間制限とか、メイドと話すのはOKだけどお触りはNGとか、そんなようなことだろうか?
「この後心置きなくお過ごしいただくために、前金制となっております。六文、又は会員チケットを頂戴いたします」
六万!?
想像していたよりもかなり高い。
ここまで来て恥ずかしいが、丁重に謝罪して退店しよう……。
「あっ、あの……大変言い難いのですが……」
あたふたしていると、メイドがスッと側に寄り、僕の胸ポケットへ白い手を伸ばしてきた。
「会員チケットをご利用ですね」
それはあの交差点で拾った黒い羽根。
「それ、拾った物なんです。僕のものでは……」
正直に伝えようとしたけれど、メイドは気にする様子もなく「確かに受けとりました」とほんのり微笑みを返してくるだけ。
彼女がその羽根を自分の肩の後ろへ回すと、背中の羽根と同化した。
「まずはコートをお預かりいたします。お席はこちらです」
促されて席に着くと、メイドは恭しくお辞儀をして、メニュー表を手渡してきた。
「この中からお好きなメニューを、どれでも三つお選びいただけます」
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