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 道は大きな通りがまっすぐに一本のびている。  両側には見慣れているはずの、でも思い出せない街並み。  コンビニやガソリンスタンドに誰かいないか覗いてみたけれど、明かりが消えて人の気配はしない。  まるで……休日にいつもプレイするディストピア物のゲームの中に迷い込んだようだ……なんて呑気に考えていた。このありえない状況は夢に決まっている。  これがそんな世界ならば、病院やスーパー等に立ち寄っては大体ロクなイベントが起こらない。ゾンビやら、キメラのような謎の生物が現れたりしたら、逃げ(おお)せる体力も知力も無い。  そんなくだらない想像を働かせてしまったからだろうか。  視界の端に黒いモヤのような影を見かけてビクッとした。  ちょうど人と同じような大きさの、向こう側が透けて見える薄黒いモヤの塊。  辺りが薄暗くすぐに気付かなかったが、よく目を凝らすとあちこちに、同じような薄黒い影がうごめいている。  それらはゆっくり歩くような速度で、同じ方向へ進んでいるようだ。  僕は怖くなって、その流れからそれた脇道へ入った。  時間の経過がわからない。  かなりの時間その場でうずくまっていたけれど、ずっと夕刻のような暗さから変わらない。黄昏時の空の色なんて、あっという間に変わっていくのに。  そういえば、最近は空なんて見ることがなくなったよな……なんて思いながら顔を上げた。  オレンジ色からピンクのような紫色になって反対側は群青から黒へ……。  黒い方の空の下へ視線を向けた時、一軒の建物から明かりが漏れているのが目に入った。  軒先の看板は、黒地に白いコーヒーカップのイラストがひとつ描かれている。  足は自然とその店へ吸い寄せられた。  用水路のような小さな川にかかった橋を渡り、そのすぐ向こう側に建つレトロな洋館。  黒く重い木の扉を開けると芳しいコーヒーの香りが鼻腔をくすぐる。 「おかえりなさいませご主人様」
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