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 扉を開けて目に入ったのは、蝋燭の炎と、その灯りに照らされた人形のように美しい女性の顔。 「ご主人様?え?僕?」  一瞬、誰かと間違えられたのかと、後ろを振り向いたけれど誰もいない。  入り口で出迎えた女性は、ロングスカートのメイド服を着ていた。三本の蝋燭が乗った燭台を手にしていて、少々ホラーじみた雰囲気を醸し出している。 「ご主人様。当メイド喫茶は貴方様のご自宅。貴方様はご主人様です」  そこまで聞いて合点がいった。  メイド喫茶。  一度行ってみたいと思っていた、ご主人様気分が味わえるコンセプトのカフェのようだ。  しかし誰もいないこの街でなぜ、こんな店が一ヶ所だけ営業しているのか……? 「今一度、おかえりなさいませ。今生お疲れ様でございました。さ、どうぞ中へ。足元1段段差がございます。お気をつけください」  今生お疲れ様でした?  妙な言い方をするなぁと少々不思議に思ったが、誘われるまま中へと進んだ。  まあ、夢の中ならば、多少おかしなことも当然のように話が進むものだ。  メイド喫茶といえば、キャンディカラーの壁紙やインテリアに、これまたお菓子のような色合いのミニスカメイド服を着たツインテールの女子がいる……そんなイメージとはかけ離れていた。  店内の照明には無数の蝋燭が使用されている。  内装は外からの印象よりも豪華で、ヨーロッパの老舗カフェを思わせた。テーブル席がずらっと横に並び、各テーブルを一卓ずつ囲むように半円のソファが壁に作り付けられている。座面はワインレッドのベルベット生地で厚みがあり、座り心地が良さそうだ。
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