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「この雨なかなかやまなそうだね」
「……はぁ」
普通に話しかけてくれているその人にあたしは大した返事もできない。
彼はなにかスポーツをやっていたのだろうか、ガタイがいい。そして、つり上がった眉毛と切れ長の目が特徴的。なんだか色気をまとったその顔はきっとモテるだろう顔をしている。
「もしかして怖がられてる?」
「……いや、別に」
怖いですなんて言えるわけもなく、下を向いたまま答える。
「俺、大学まで野球やってて、筋トレ三昧だったから体が大きくて、そんでもって目つきも悪いから怖がられんだよな。そんなつもりないんだけど」
やっぱりスポーツをやってたらしい彼の腕は筋肉質でガッチリとしているのが見て取れる。
「見た目より怖くないのはわかります……」
「ほんと?よかった。こっち見てよ」
「……え」
彼の言葉に思わず顔を上げてしまった。
「お、やっと目があった」と嬉しそうに笑う。
目つきが悪いかもしれないけど、笑った顔は少年のようなあどけさが残っていて可愛かった。
「雨あがるまでせっかくだからなにか話さない?」
「……え?」
「これも何かの縁だし」
「……わかりました」
気さくに話しかけてくれる彼とは正反対に他人にあまり心を開けないあたしは、一言二言相槌を打つだけなのに、彼は楽しそうにどんどん話してくれた。
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