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「俺の高校のチームメイトがプロでやっててさ、今日試合見に行く予定だったんだけど試合あるかなー」
「あっ、俺大学までキャッチャーだったんだよ」
「最近は小さい子に教える教室もやってる」
「もっともっと野球人気増やしたくて今の仕事をしてる」
少し聞いただけで彼が野球を好きなんだってことがわかる。
「野球ってずっと人気なんじゃないの?」
「うーん……小さい子のやりたいスポーツがいまは野球よりサッカーの方が人気かなって感じ」
「そうなんだ」
「もっともっと野球やってる人口を増やしたくてね。野球界を盛り上げたい」
彼は大学で野球をやめたあと、なにか野球に関わる仕事をしたいと考えたらしい。
色んなものを試して、いまは野球教室を開いたり、各地の子供たちを繋げたりとているようだった。
彼の楽しそうに話す様子に段々あたしの心はほぐれて行く。
楽しそうな声につられて、あたしも思わず笑ってしまう。彼の声には不思議な力があった。
「やった、笑ってくれた」
「……え?」
「表情かわんないんだもん。人形みたいだった……おっ電話だ」
彼のスマホが着信を告げ「ちょっと出るね」とスマホを耳に当てる。
──おい、イト!なにやってんだよ!おせぇぞ!
スマホから聞こえる声はすごく大きい声だったようで、あたしの耳にも届いた。
「もう少し小さく喋れよ。耳に響く」と言いながら苦笑いをしている。
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