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神様の言葉を頭の中で反芻し、パッと視界が切り替わる。いつも飛んでいる空の下で、私は放心したまま宙に浮かんでいた。
前世で私が死んだとき。迎えに来てくれたヒョウタさんが言っていた。
ーー《助ける? どうしてボクがキミを助けるの?》
協力なんてできない、生者には関わりようがない。彼は天使の役目を淡々と説明してくれた。
出来ることと、出来ないことがある。
じわりと滲んだ視界を閉じて、ぶんぶんと首を振った。それでも私は、生者のために立ち回ろうと固く決意した。
本来なら、ヒョウタさんのように、より多くの魂を天界へ送るべきなんだろう。けれど、今現在、懸命に生きている人間も助けてあげたい。そう考えてから、頬を伝う涙をきゅっと拭った。
“助けてあげたい、だなんて。驕りもいいところだね”ーーヒョウタさんならきっとそう言う。けれど、天使である以上、私は生者に善い行いをしたいのだ。
ポケットに手を突っ込み、次に送るべきリストに目を通した。燦々と陽が降り注ぐ青空の下。二枚の羽を広げて、今日も私は飛んで行く。
〈了〉
天使のささやき 全7話完結
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