ep2.生まれ変わりの条件

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 ◇ 前世の約束  西園寺家は、明治、大正から続く大地主で、絹子さんは旧家の令嬢だった。子供の頃に親同士が決めた許嫁(いいなずけ)がいて、彼女は自由を制限された箱入り娘。さながら広い籠で飼われた鳥だ。  僕はといえば、西園寺家に出入りするしがない庭師で、いつも縁側で本を読む彼女をこっそりと盗み見ていた。  僕の視線に気付き、彼女は時折頬を赤らめて微笑む。僕たちはただ見つめ合うだけの関係だったが、内に秘めた想いは同じだった。  互いに恋慕を募らせ、彼女の想いと通じ合えたのは、紅葉(もみじ)の葉が落ちる秋の日のこと。  僕は仕事の合間を縫って、絹子さんと逢瀬を重ねた。彼女から許嫁の存在を聞いてはいたが、恋い慕う気持ちは止められなかった。  当然、危うい関係は長続きせず、彼女の許嫁に僕の存在を知られた。 「絹子ッ! よくも私を裏切ったな!?」  庭に置いたままの刈り込み(ばさみ)を引っ掴み、許嫁の男は激怒した。咄嗟のことに体が動き、僕は彼女の前に立ちはだかった。  ドス、と音を立て、僕の腹部を刃の長い鋏が貫いていた。  喉奥から迫り上がる生温い液体を、咳と共に吐き出す。相手の男に血飛沫(ちしぶき)が飛び、絹子さんの悲鳴が空気を引き裂いた。
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