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◇ 光の中へ
僕たちを繋ぐ想いの糸が切れたのは、絹子さんの心臓が止まったときだった。
僕はどういう作用が働いたのかも考えず、突然若返った彼女を見つめて言った。
《誰とも、結婚しなかったんだね》
既に死亡者リストを見て知っていたが、直接彼女に確かめたかった。彼女は困ったように微笑み、『あなたがいないから』と答えた。
『倫太郎さんにもう一度会えることだけを願って……半世紀以上も生きてしまったわ。随分と待たせたわよね?』
そう言って見上げてくる瞳を見つめ、ふと頭に閃くものを感じた。
なんだ。そういうことか。
『倫太郎さん? どうかした?』
ハッとしてから目を細めた僕を見て、絹子さんは首を傾げた。僕は彼女の両手を握りしめ、《何でもない》と首を振る。
神様が僕を例外の魂として呼びつけ、あの二者択一を迫った理由が今になってようやく分かった。
輪廻転生するための条件として出されたのは、9万9千1の魂を無事に成仏させること。単なる思い付きにしては何ともでたらめな数字だ。その最後の一人が、前世での想い人である絹子さんだった。
すなわち、これが何を意味するのか。神様の趣向が手に取るように理解できた。
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