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僕は深呼吸し、問題のシーンを頭の中に思い浮かべた。恋人を亡くした“ハルト”が絶望し、暗闇の中で膝を抱えるシーンだ。
ハルトにとって、恋人のアヤが人生の全てだった。アヤの為に生きていたと言っても過言ではなく、彼女を亡くした彼にとって未来は大きな闇でしかない。
このまま死んでしまえばもう生きなくていい。死に対してそんな希望を見出だし、自殺を図ろうとする。そこでハルトは気付く。愛しいアヤが目の前に座っていることに。
いつからそこに居たのだろう。喜びともつかない感情が湧き起こり、彼女に触れようとするが叶わない。生きて欲しいというアヤの願いを聞き、自殺を思い止まる。
やがてアヤが消えてしまうのを見て、ハルトが一人泣き崩れるところで場面が変わる、……そんなシーンだ。
僕は眉間にシワを寄せ、ため息をこぼした。
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