ep3.聖なる祈り

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 8. 「っよし! カーット!」  監督の指示で、僕は現実へと連れ戻された。 「いやぁ、良かったよ、叶多! ハルトの絶望感がビシビシと伝わってきて……迫力があった!」 「あ。ありがとう、ございます」  嬉しそうに笑う監督に背中をポンポンとされ、成功の二文字をじわじわと噛み締める。 「よくやったな、叶多っ」  マネージャーからハンカチを渡され、自らの涙でびしょ濡れになっていた頬を拭く。  自分でも不思議な感覚だった。あれほど分からなかったハルトの心情が、手に取るように理解できた。そしてそれが分かったのは、実は星伽のお陰だったりする。  演じるのが難しいと愚痴をこぼした僕に、彼女は言った。『砂漠に放置された一輪の花かもしれない』と。 『大切な人を亡くしてまで生きなければいけないって。きっと水を貰えない花みたいなものなんだと、私は思うな』  未来を見出せない地獄を、彼女はそう喩えていた。カラカラになって朽ち果てても、絶望は消えない。無気力になってただ心臓が止まるまで生かされる。  想像でしかなかったが、不思議とその感覚が理解できて、演じることに成功したのだ。そうとしか思えなかった。
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