ep3.聖なる祈り

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 10. 「お母さんっ、どうして死んじゃったの?」  暗い病室の中。それまで母子家庭で育ってきた星伽は、母親の急過ぎる死を、一人で看取ったらしい。まだ小学二年生で、ひとりでは到底生きていけない年齢だ。先の見えない未来に絶望していたとき。ふと窓の外から月光が降り注いだ。  明るい光に誘われて、夜空を見上げる。真っ白い羽が彼女の視界に映り込んだ。星伽はこのとき、天使と目が合ったと言う。  幼い星伽はピタリと泣き止み、窓を開けて呼びかけた。 「天使さん……お母さんを連れて行くの?」  特別、霊感などない星伽には母親の姿は見えなかったらしいが、真っ白い羽を携える天使だけは見えたのだ。天使は当惑しつつも、悲しそうに微笑み、こくりとひとつ頷いた。 「いやっ、お母さんを連れて行かないで! お願いだから、お母さんを助けてよっ!」 《……ごめんね、それはできないよ》  願いを拒まれて、彼女自身、引っ込みが付かなかったらしい。 「どうして? その白い羽で魔法を掛けてっ、お母さんを助けてよぅ」  さめざめと泣く星伽に、天使はごめんと続けた。 《天使が落とした羽の力なら、願いを叶えられるかもしれない》 「っだ、だったら、今その羽を」  天使は眉を下げ、青紫色の瞳を細めて首を横に振った。 《ごめんね。気付かずに落としたものじゃないと有効に働かないんだ。いつかきっと……それを拾える日が来るといいね?》
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