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◇ Prologue
「うそ、ペアリング?」
夕陽を浴びて煌めく噴水のそばで、私は彼の手元を見つめて息を呑んだ。
彼が開けた白い箱には、それぞれ号数の違ったリングが二つ、クッションの切り込みに埋まっていた。
「うん。俺ら付き合ってもう一年だし、こういうのもいいかなって」
二つ並んだ指輪のうち、彼が大きい方をつまみ、右手の薬指に嵌めた。
「こうやってペアで付けよう?」
言いながら私の手の平に小さめのそれを載せてくれる。嬉しい、と呟き、自然と顔が綻んだ。
「ありがとう、市ヶ谷くん」
銀色に輝くリングを、大切に薬指に嵌めると、彼が照れ臭そうに頬を掻いた。
「あー……、それ、なんだけどさぁ」
「うん?」
「そろそろ苗字呼び、やめにしない?」
「え」
「湊でいいよ、俺もこれからは澪って呼ぶし」
屈託のない笑みに、心臓の奥がキュンと震えた。
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