ep4.リングをひろって

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 ◇ Prologue 「うそ、ペアリング?」  夕陽を浴びて煌めく噴水のそばで、私は彼の手元を見つめて息を呑んだ。  彼が開けた白い箱には、それぞれ号数の違ったリングが二つ、クッションの切り込みに埋まっていた。 「うん。俺ら付き合ってもう一年だし、こういうのもいいかなって」  二つ並んだ指輪のうち、彼が大きい方をつまみ、右手の薬指に嵌めた。 「こうやってペアで付けよう?」  言いながら私の手の平に小さめのそれを載せてくれる。嬉しい、と呟き、自然と顔が綻んだ。 「ありがとう、市ヶ谷(いちがや)くん」  銀色に輝くリングを、大切に薬指に嵌めると、彼が照れ臭そうに頬を掻いた。 「あー……、それ、なんだけどさぁ」 「うん?」 「そろそろ苗字呼び、やめにしない?」 「え」 「(みなと)でいいよ、俺もこれからは(みお)って呼ぶし」  屈託のない笑みに、心臓の奥がキュンと震えた。
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