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『なんで天使が? っあ、もしかしてコスプレ?』
彼が放つ異様なオーラから、生きている人間とも思えなかったが、つい冗談めかして尋ねていた。
天使は呆れて息をつき、胸ポケットから楕円形の機器を取り出した。それを慣れた手つきで操作し、私に向けてくる。まるで電子体温計で熱を測るみたいに。
《キミ、坂下 澪さんっていうんだね。見た目が丸い魂だから分からなかったけど、女の子か。歳は二十歳……あ〜、でももうすぐ二十一なんだ? 死亡者リストにも載ってないし、まだキミの体は生きてるねぇ》
え。
《ああ、そうか。ここで事故に遭って、体だけ先に病院に運ばれたんだね。搬送先の病院まで送って行こうか? ちょうど手も空いてるし》
『……な、』
機器ひとつで私のことをぽんぽん言い当てる天使に、少々面食らっていた。
『でも私、ここでどうしても見つけなければいけないの。あれがないと、彼氏と仲直りできないのっ』
《そのあたりの事情は察するけど……。魂が長く本体から離れるのはいけないな。このまま死んじゃってもいいの?》
『……それは』
天使は私のそばにしゃがんだ。彼から見れば、私はどうやら丸い球体で、人の姿ではないらしい。言い淀む私を見て、天使がフッと微笑んだ。
《じゃあ。キミになにがあったのか、なにを探しているのか話してくれる? 迷子の魂を本体に還すのはそれからでも遅くないから》
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