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◇ 昨日
駅で待ち合わせをした彼氏、湊と会うなり、ついふて腐れた態度を取ってしまった。
「おい、澪! さっきからなに怒ってるんだよ!」
湊の話に適当な相槌しか打てず、遂にはイライラとモヤモヤが募って一人でさっさと歩き出してしまった。そんな私を湊が追いかけてくれる。
「だって私。昨日見ちゃったんだもん」
「見たって何を?」
気づけば知らないマンションの前で立ち止まっていた。振り返って湊を睨みつける。
「昨日の夕方、湊が綺麗な女の人と一緒にいるとこ!」
「っ、あれは……」
思い当たる節があるのか、一瞬にして顔色が変わった彼を見て、やはりクロだと確信する。
「私に黙って浮気してるんでしょ!」
「ち、違うよ! あれは兄貴の奥さんで義姉さんなの。昨日はたまたま買い物に付き合ってもらっただけって言うか……」
「うそっ! 私との約束はキャンセルして、他の女の人とデートしてたんでしょ!? すごく仲良さそうに笑ってたもんね!」
「嘘じゃねーよ。澪、誤解してるんだよ。何だったら今から本人呼び出すから、ちゃんと話し合って、」
「いやっ!」
スマホを出す彼を見て、私は大きく頭を振った。
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