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花屋に来るお客さんに恋をするなんて、花純さんは惚れっぽいに違いない。涙もろく、他人に同調する平和主義者だ。天国や成仏という、非現実的なことを真面目に信じている。
饒舌なのはお酒のせいなのか、元からそうなのか、思考まで口にしているような気がする。
そして得体の知れない僕が部屋にいるというのに、その場で眠れるほど肝が座っている。
多分ちょっと……、いや、かなり?
変わってる。
それでも思わずにはいられない。花純さんの半分も生きていない僕が思うのはおかしいかもしれないが。彼女は総じて可愛らしい、と。
僕は無邪気に眠る彼女を見つめ、そっと玄関へ向かった。とにかく、僕が死んだ件に関して、花純さんを巻き込むのは申し訳ない。早く彼女と離れて、この先のことは自分で解決しよう。
ドアノブにさわれなくても、幽霊なんだからこのまますり抜けられるはずだ。ドアまであと数歩というところで、僕の動きは見えない壁に阻まれた。
いや、壁というのは間違いだ。単純に首輪を付けられた犬のように、リードか何かで動きを封じられている。これ以上進むことを禁じられている。
うう……っ、何で??
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