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『指輪を見つけてから戻っても遅くないでしょ? あと十分探して見つからなかったら諦めるから』
《まぁ、幸いと言うか。事故に遭ってからそう時間は経っていないみたいだね。……けど、たとえ見つけたとしても、どうやって拾うのさ?》
『……あ』
盲点だった。実体を伴わないと理解しつつも、今のままだと拾えないということに、今更ながら気がついた。
探すこと自体を諦めるしかないと悟ったとき。太陽の反射を受け、植え込みの奥がキラ、と光った。逸る気持ちを抑え、その一点を凝視する。
『あっ』
植木の葉に引っかかった小さなリングが、鈍い輝きを放っていた。
『あった……』
《そうだね》
球体でふわふわと浮かぶ私のそばで、嘆息が聞こえる。
《拾うのはキミの意識が本体で覚醒してからにして、今は大人しく病院に……》
そこで言葉を切り、天使が歩道の先を見つめた。あ、と口を開けている。眉を潜めた表情から、マズイとその顔に書いてある。
『なに?』
天使の目線を確認しようとするが、球体で浮遊するのは難しく、視界を変えるのに手こずった。
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