ep4.リングをひろって

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 ◇ 現在.3  歩くこともできるようだが、私は空に舞い上がり、宙空を移動していた。その方が早いと思った。  歩道を駆ける湊とある程度の距離が開いた途端、蜘蛛の糸のようなものが宙にふわりと現れて揺れた。  なんだろう、白い糸?  ちょうど私の背中から出ているようだが、その正体は不明だ。  あの後。動揺から不安な表情(かお)をする湊に、病院に行って私の体に指輪を渡して欲しい、とお願いをした。湊は小刻みに頷き、震える声で「分かった」と返事をした。  ーー《とにかく。ボクが言えるのはできるだけ早く病院に行くこと。その指輪をね?》  ーー《待ってるからね?》  私は天使の言葉を思い出していた。天使は私じゃない誰か、つまり彼氏である湊が拾うことを予期していた。  早口で用件だけを伝え、パッと消えたのも気になる。 『病院に行って……どういうことか教えてもらわないと』  無論、元の体に戻るのが先決なのだが。私はあの天使に会って、事の次第を確かめようと思っていた。  *  天使の言葉通り、私の体は303号室のベッドに寝かされていた。酸素マスクを付け、頭に包帯やネットを巻かれた姿は怪我人然としている。
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